ゴールデンウィークに、メンバー7名で五竜岳から唐松岳までの縦走に挑戦した。
ゴールデンウィークをどう過ごすか。友人と会う、家族で遠出する、自宅でのんびりする――さまざまな選択肢があるが、私たちが選んだのは「山」だった。
残雪期の山は、厳冬期ほど寒くなく、夏山ほど暑くもない。北アルプスでは、雪の白と芽吹き始めた木々の緑が重なり、この時期ならではの景色を見ることができる。
一方で、残雪期は雪面の凍結や雪崩、滑落などの危険がある。今回の山行でも、装備や技術の重要性をあらためて実感することになった。
1日目
計画を立てたとき、ゴールデンウィークの交通事情を十分に考慮できていなかった。
高速道路は大渋滞。途中で事故も発生していたようで、出発してから5時間が経過しても、まだ目的地まではかなりの距離が残っていた。
「夜のうちに出発した方がよかったのではないか」
そんなことを考えながら、車内で過ごすこと約12時間。ようやく白馬周辺に到着した。
この日の白馬は、空一面を雲が覆う不安定な天候だった。周辺の山域では遭難事故も発生していたと知り、無理に入山せず日程を調整しておいてよかったと感じた。
その日は近くの宿に宿泊した。
部屋は合宿所の大部屋を思わせる雰囲気だったが、ゴールデンウィーク直前の予約にもかかわらず、7人全員が同じ部屋に泊まれたのはありがたかった。
翌日の行程を確認し、軽く食事をした後、早めに就寝した。
2日目
朝起きて窓を開けると、前日の天気がうそのように、青空が広がっていた。
ほとんど雲のない快晴である。
「今日は良い山行になりそうだ」
そう思わせてくれる空だった。

下山地点となる八方尾根側に車を置き、タクシーで五竜側のスキー場へ移動した。今回は五竜岳から唐松岳へ縦走するため、登山口と下山口が異なる。
スキー場のゴンドラとリフトを利用して標高を上げ、そこから本格的に歩き始めた。
雪に覆われた斜面を、周囲の景色を楽しみながら登っていく。天候にも恵まれ、大きなトラブルなく順調に高度を上げることができた。

やがて五竜山荘付近のテント場に到着した。
テントを設営し、夕食の準備を始める。メニューはカップ麺とレトルトカレー。創意工夫という点では物足りないが、疲れた身体には間違いなくおいしい。
山では、凝った料理よりも、簡単で温かく、確実に食べられるものがありがたい。

夕方には、山の向こうへ沈んでいく太陽を見ることができた。白い雪面が淡い赤色に染まり、遠くの空には細い光が残っていた。

翌日は長い行程になる。
夕日が沈むのを見届けた後、それぞれテントに入り、眠りについた。
3日目
この日は、非常に長い一日となった。
まだ暗いうちに起床し、五竜岳山頂を目指す。当初は午前4時に出発する予定だったが、準備に時間がかかり、全員がそろったのは午前4時30分ごろだった。
先に準備を終えて待っていたメンバーには、少し申し訳ないことをした。
ただし、ある程度の遅れは想定しており、余裕を持った出発時刻を設定していたため、行程上は問題なかった。
ヘッドライトを点けて歩き始める。
凍結した雪面を慎重に横断し、アイゼンを効かせながら岩場を越える。場所によっては急な雪面をほぼ直登する必要があった。
歩き始めてから約1時間半。ようやく五竜岳の山頂に到着した。

山頂からは、雪に覆われた北アルプスの山々が一望できた。
遠くまで続く白い稜線と、その向こうに広がる青空。これまでにもさまざまな山を訪れてきたが、それでも言葉を失うほどの景色だった。

残雪期の山に何度も登っていると、少しぜいたくになってしまう。並の景色では驚かなくなってしまうほど、この季節の北アルプスには圧倒的な美しさがある。

山頂で景色を楽しんだ後、テント場へ戻る。
しかし、登り以上に緊張したのが下山だった。
早朝の雪面は硬く凍結しており、アイゼンやピッケルが効きにくい場所もあった。特に、急斜面を下りながら横断する区間では、滑落すれば大きな事故につながる可能性がある。
メンバー同士で声を掛け合い、先行していた経験者からも助言を受けながら、慎重に通過した。
この場面では、技術だけでなく、装備の選択も非常に重要であることを実感した。
残雪期の高山では、一般的な夏用登山靴では保温性や剛性が不足する場合がある。今回の経験を通じて、今後はより適切な装備を準備する必要があると感じた。

全員が無事にテント場まで戻ったときは、心からほっとした。
テント場で少し休憩した後、テントを撤収する。
ここからは、60リットル前後のザックを背負って唐松岳方面へ縦走する。
序盤は気持ちのよい稜線歩きだった。左右に広がる山々を眺めながら、雪と岩が混ざる道を進んでいく。
しかし、次第に道は険しくなった。
途中には、岩場と鎖場が続く難所がある。数メートルほど下降する場所では、足を置ける幅が狭く、雪面は硬く凍っていた。さらに、本来つかめるはずの鎖が雪に埋まっている部分もあった。
一歩ずつ足場を確認しながら、慎重に進む。
時間はかかったが、全員が無事に難所を通過することができた。
唐松岳の山荘付近に重いザックを置き、身軽な状態で山頂を目指した。
この日は朝からずっと眺望に恵まれていたが、唐松岳から見える景色も素晴らしかった。
五竜岳から歩いてきた稜線や、雪をまとった山々が遠くまで続いている。
普段登っている身近な山にもそれぞれの良さがある。しかし、この日の景色を見た直後では、しばらく物足りなく感じてしまうかもしれない。
山頂で記念撮影をした後、八方尾根方面へ下山を開始した。
約2時間歩き、リフトとゴンドラを乗り継いで麓へ戻った。
全員が無事に帰ってくることができて、本当によかった。
下山後は温泉に立ち寄り、冷えた身体と疲れた脚を温めた。
その後、近くの飲食店で夕食をとった。長い一日を終えた後の温かい食事は格別だった。
今回の山行を最後に、しばらく一緒に活動できなくなるメンバーもいた。食事の席では、これまでの活動を振り返りながら、それぞれに感謝を伝えていた。
帰宅するころには公共交通機関の運行が終了していたため、車を出してくれたメンバーが参加者を順番に送り届けてくれた。
長距離の運転も含め、本当にありがとうございました。
おわりに
今回の山行では、晴天の北アルプスと、残雪期ならではの美しい景色を楽しむことができた。
その一方で、凍結した急斜面や雪に埋もれた鎖場など、緊張を強いられる場面も多かった。
残雪期の登山は、単なる「雪の残った春山」ではない。
天候や気温によって雪の状態は大きく変化し、冬山に近い装備や技術が求められる。事前の情報収集、適切な装備、余裕のある計画、そして撤退の判断が欠かせない。
全員が無事に山行を終えられたことに感謝しつつ、今回得た経験を次の山行に生かしたい。
