経緯
元々この遠征は槍ヶ岳/表銀座縦走で募集していた。出発の 1 週間ぐらい前からてんくらを見ていたが、3 日間ずっと C、風速 28m、雨。軽く絶望。こんな天候でテント泊をしたらテントともども吹き飛ばされてしまう。それゆえ、天候を気にして山荘のライブカメラやブログを頻繁に見ていた。出発直前になり予報が好転。てんくらが A になり、風速も微風になった。しかし気分が乗らない。すでに槍ヶ岳周辺の情報を調べきってしまい、わくわく感がないというか、行きたい気持ちが薄れてしまっていた。そこで、わくわくする危ない山を探した。すぐに剱岳を見つける。ページの先頭には最高難易度とある。いい響きだ。コースタイムや残雪の状況、難易度の具合など、調べるべき情報はたくさんあったが、槍ヶ岳の二の舞になることを避けるべくブラウザを閉じた。
7.12
20時に六甲道に集合すると、駐車場には新型プリウスが待っていた。スタイリッシュな見た目で、ハンドル周りは高評価。オートパイロット機能も付いているが、積載量はゼロ点。男5人とザック、共同装備が全て詰め込める気はしない。山向けではなく、ドライブデート向けの車だ。買い出しと部室で準備し、残雪の状況が不明なので軽アイゼンを持っていく。アイゼンを持っていくときの高揚感は独特だ。大阪発の小林車と草津PAで合流し、天気予報を確認。剱岳は晴れ、槍ヶ岳は雨の予報を見せ、目的地を剱岳に変更することに全員の同意を得た。無事に予定を変更し、6時間ほど交代しながら夜の高速を走り続けた。
7.13
朝5時、立山山麓に到着。荷物をまとめて駅へ向かい、3連休初日のため混雑するアルペンルートでケーブルカーとバスを乗り継ぎ、9時頃に室堂へ到着。標高2400mの美しい高山の風景が広がる。立山山頂を目指して歩き始めると、意外にも叶が先頭で早いペースで進む。途中の山荘で休憩中に、叶のザックが軽すぎることが発覚。彼は寝袋しか持ってきておらず、忙しくて計画書を見る暇がなかったという。強がってテントを持つと言い出したが、ゆいさんから鋭いツッコミを受けた。稜線を進むと素晴らしい景色が広がり、登る予定だった槍ヶ岳もよく見えたが、「槍ヶ岳も晴れてるやん」というクレームは出ずに済んだ。立山三山(雄山、大汝山、別山)を順調に登頂するも、キャンプ場に着く頃には体調不良者が続出。夜通しの運転が響いたのだろう。キャンプ場から見える剱岳は威圧感があり、ゴジラの背中のよう。ここには富山県警山岳警備隊の拠点があり、隊員たちはまさに山のプロフェッショナルといった風格だった。夕食にサバ缶カレーを食べ、18時には就寝。
7.14
深夜2時、剱岳アタック組の5人はヘッドライトを点けて出発。雪渓や鎖場を進む中、富山市街の夜景がかすかに見える。夜が明ける頃に前剱に到着するが、ガスがかかり始める。途中で雷鳥に遭遇し、ずんぐりむっくりとした姿に叶を重ねる。カニのタテバイを越え、6時前に剱岳山頂に到達。標高2999m、上半身は3000mの世界だが、ガスで眺望は真っ白。9時からの雨予報を見越し、早々に下山。テント場に戻ると雨が降り始め、濡れたテントを撤収して室堂へ下山。大雨の中、川のようになった登山道を進み、途中の山荘に到着。夜通しの運転は無理だと判断し、宿を探すが、3連休の日曜日で10人分の当日予約は難題。しかし、リーダーのリサーチ力で「いるかホステル」という宿を確保。1泊3000円で清潔感もあり、すぐに予約完了。宿からの不在着信に折り返すと、僕の住所を見て神戸大学の名前に不安を感じた様子。実は、以前「バッドボーイズ」が富山の宿を荒らしたことで、神戸大学の評判が悪かったのだ。探検部が公認部活であることを説明し、無事に宿泊が決定。温泉に入り、食事を楽しみ、深夜3時頃に就寝。25時間行動の一日だった。
7.15
9時過ぎに起床。この日は観光して帰るのみ。僕たちの車は「すしくいねぇ」で昼食をとり、21世紀美術館へ。現代アートを見たが、何を表現しているのかさっぱり分からない。解説を読むとさらに分からなくなった。芸術とはこういうものだろう。加賀棒茶のかき氷を食べ、石川県立図書館の美しさに驚き、帰宅。小林車は白川郷へ行ったらしい。探検部にしては珍しくしっかり観光したが、たまにはこういうのも良いものだ。
感想
今までのテント泊登山では、共同装備をすべて先輩に持って貰っていた。今回はじめて 4 テンを持ったが、ザックが重く想像以上に体力を消費した。今回は登山口からテント場まで標高差 600m だったが、槍ヶ岳だと標高差 2000m もあった。結果論だが、立山にして良かったかもしれない。100L のザックを背負って白馬大雪渓を登った村上さんや、6 テンを持ってひとり別のピークに走っていった新留さんはバケモノだ。もしくは変態か。ちなみに 1 年生は共同装備を先輩に持って貰えるので、テント泊登山をするなら今がチャンス。北岳、八ヶ岳、鹿島槍、大キレットと行きたい山はたくさんあるので、また企画したいと思う。おわり。