はじめに
きっかけは六甲祭(神戸大学学校祭)の打ち上げだった。
この度部長に就任したのだけれど、正直なところ「やりたいこと」が何もない。
むしろ“長としての責任”とか“組織を続けるための努力”とか“提出書類”とか“残り少ない部費”とか、そういう単語を思い浮かべるだけで士気が下がっていく。逃げ出したい。
なにやってんだ!
勝手に精神的にしんどくなって、勝手に落ち込んでいた。
そんな折、「どんな企画やります?」みたいな話になって、先輩たちから適当に、
「100kmウォークやったら?」
と提案された。
(逡巡)
……やることにした。
吹っ切れたい。
な〜んもやりたくない。でも、なんかはやりたい。
そんな矛盾の行き先として、100kmウォークはちょうどよかった。
最初は「彦根城から大阪城(105km)」案も出たけど、彦根までの交通費が嫌すぎて却下。
結果、姫路城から大阪城までの100kmルートを歩くことにした。関西エクストリームウォーク100でも使われた、ネットに公開されているルートだ。

日程は 1/17〜1/18。
大学のテスト期間を避けられるし、トレーニング期間も確保できる。
ただし、日をまたいで 25時間前後、不眠で歩き続けることになる。
グループLINEで参加者を募ると、意外にも自分含めて4人集まった。
来るんだ……。
かくして、私たちは100kmを歩くことになった。
1/17当日
今ごろ世の受験生は共通テスト。京大文学部志望の友人が2人いる。
一浪と二浪。がんばってんのやろなあ。
そんなことを考えつつ、私はというとシャワーをゆっくり浴びてしまい、姫路駅12:00集合に10分遅刻。
申し訳ない。
当日集まったのは自分含めて数人。
(直前でバイトが入ってしまい、来られなくなった人もいた。)
準備は一応していた。
コンサートホールの搬入出バイトを多めに入れて、10時間働いたあと15km歩いて帰ったりしていた。
ただ、そのバイトで背中を痛めて早上がりしてからというもの、ウォークまでの1週間は全く運動できていない。そこだけが不安。
ここからは、グループLINEに残していた活動メモを見ながら振り返っていく。
12:26 出発:晴天、抹茶チョコ、最高
12:26
姫路公園東御屋敷跡公園を出発。とても晴れていて、気分がいい。
メンバー全員気力にあふれている。
エネルギー切れは嫌なので、行動食として持参したお得用抹茶チョコをぱくつきながら歩く。
たぶん一粒で1km歩ける。
クリームチーズたい焼きとプチトマトも食べた。うまい!


16:17 CP1 鶴林寺公園:まだ余裕
16:17
CP1 鶴林寺公園到着。さすがに余裕。
同行者のひとりは過去に100kmウォーク経験者らしい。
六甲全山(約50km)を短時間で縦走してしまうような人なので、まあ強い。
……と思いきや、今日の装備がナメている。
靴は破けたランニングシューズだし、バッグの中にはホッチキスとか関数電卓とか入っていた。
普段使いのバッグ、そのまま持ってきちゃったの?
関数の微分しないよ?
ローソンでおやつを買う。
アジフライをLチキ用バンズで挟んだやつ。アジフライ半額で200円くらい。美味い。
晩ご飯は「資さんうどん」に行きたかったけど行列で断念し、近くの定食屋へ。

21:22 CP2 上ケ池公園:痛みが見えてくる
21:22
CP2 上ケ池公園到着。足裏に少し痛み。でもまだ行けそう。
国道2号を北に進む。
ここまでもここからも、そして人生も、基本的に国道2号を北に進む(?)。
国道沿いに点在するチェーン店は日本の縮図で、地方都市の街並みが好きな私はずっとテンションが高かった。
ただ、30km地点で楽しすぎると、この先がもたない気もして、心を抑え気味に。
22:15 じごくのはじまり:ずっと痛い
22:15
じごくのはじまり。
脚が痛い。
足裏のジンとした痛みと、ふくらはぎの張るような痛みがずっとある。
これからの歩みに「痛みがない瞬間」がない。ずっと痛い。
ここから辛くなることはあっても、これより楽になることはない。
絶望。
長い夜。刺激が少ない。痛みが常に意識される。


そんなとき、同行者のひとりが言い出す。
「パインアメ買いたいから、300m道外れたコンビニ行く」
パインアメのためにこの痛い脚で遠回りするの、正気か?と思ったけど、チームで離れるのも嫌なので一緒に行く。
そしてパインアメ。
これが効く。かなり効く。
脚の痛みとか一旦どうでもよくなって、普通に歩ける。
パインアメしゅごいぃ……。
50km地点:リタイア宣言と、甘い誘い
50km地点で、参加者のひとりがリタイアを宣言。
終電などとっくにないのでタクシーを探すことになる。
「一緒にリタイアして帰らへん?」
甘い誘いを受けて、正直揺らぐ。
でも、まだリタイアするほど辛くはないし、ここで帰るのもなんか悔しい。
ということで自分は続行を選んだ。
深夜:パトカーがうれしい
1:33
パトカーが速度違反を取り締まっている。
変化のない道を歩いていると、サイレンすらうれしい。
こんな夜中でも速度違反はバレるぞ!
1:52
またパトカーが取り締まってた。
てか飛ばしすぎなんだよな。横を通る車が全部速い。
3:04 CP3 妙法寺左岸公園:再合流
3:04
CP3 妙法寺左岸公園到着。
途中で離れていた参加者と再合流。
深夜のマクドナルドがテイクアウトのみで店内を使えず、タクシー代だけが消えたらしい。つらい。
ロキソニンが効いてきて少し歩けそうだったので、始発まで歩くことに。
ここらへんから記憶が曖昧。
足裏だけでなく膝も痛み始めていた。
4:01
排便して体が軽くなり調子が上がる(人体ってすごい)。
5:00頃:64kmで本当のリタイア
5:00頃
64km地点のJR神戸駅で、その参加者は本当のリタイア。始発で帰る。
ここからは2人。
いつも電車の車窓から眺める「三宮〜大阪」を、ほとんど無言で歩いていく。
10:14 CP4(みなし):意地が勝つ
10:14
CP4 津門中央公園到着(みなし)。
ずっと眠いし疲れてるし、脚は痛くないところがない。
でも80kmまで来た。
もうこれは、意地でも100kmまで歩くやつだな。
という確信が湧いてくる。
13:01 CP5:もう90km
13:01
CP5 佃ふれあい公園到着。
もう90km地点。
あんまり記憶がない。
淀川がキラキラ光っていて、きれいだった。

16:07 ゴール:大阪城は遠かった
16:07
ゴール!!!!!!!!!
……と言いたいところだが、実際には疲れすぎて
「ごーる…………」
って感じだった。
最後の10kmに3時間かかった。
遠くに見える大阪城を眺めて、少しだけ感動した。
総距離 101.7km。
ようやったもんだぜ。

帰宅:最後の最後が一番つらい
電車で帰宅。
最寄り駅から自宅まで歩くのに、普段の3倍時間がかかった。脚が痛すぎて歩けない。
帰宅後は熱い風呂に浸かって、そのまま寝た。
後記:限界に触れた、そして靴は大事
最近、マンガ『孤高の人』を読んだ。
単独者・加藤文太郎の生き様と厳しい山々、そして象徴的に描かれる未踏の地・K2東壁にシビれまくっている。
『孤高の人』の極限にはまだ触れられそうもない。
でも、「個人の限界に挑戦する」という意味で、この100kmウォークは有意義だった。道中はとても楽しかった。またやりたい。
そして長距離ウォークは靴が大事。
今回はナイキのAIR MAX ALPHA TRAINER 6で行ったが、辛かった。運動靴じゃないし。
ウォーキングシューズは脚の負担を減らすよう設計されている。欲しい。
ということで、100kmウォークを終えて
ASICSのゲルライドウォーク2 GORE-TEX 防水(1万8000円)
を買ってしまった。
